入院20日間 その6

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 今回は食事について書きたい。

 食べることは病人にとって、とても大事な事であるが腰の骨と首の骨を折っている私は食事するのも苦労が伴う。寝返りがうてない寝たきり状態であるが、手は自由に使える。なのでナースコールとベッドの角度を変えるスイッチは扱うことができる。

53E21CB3-91DC-41D4-B97F-558D5E6631B7.jpeg 救急車で運ばれた翌朝、前日運動しているためやたらお腹が空いていた。しかし準備がまだだったのか朝は食事が出なかった。お昼近くになり、いよいよお腹が空いてきあたら、看護師さんが食事を運んできてくれた。「自分で食べれますか?」と聞かれると、起き上がれなくても、「何とか食べれると思います」と強がって答えてしまった。

 まずは起き上がることだ。ベッドの角度をスイッチを押して上げるところからのスタート。数回に分けて角度を上げると、腰に激痛が走る。痛みの様子を見ながらさらに角度を上げる。初日目の限界の角度は45度だった。斜めの状態からだと茶碗の中身が見えないし、奥の茶碗すらどこにあるのか見る事が出来ない。手も動くけど、首や腰をひねるような体勢は無理だ。

 食べる事が難しいが、工夫をして何とか切り抜けたい。上の方から食事を見れないか考えた。「スマホの写真で上から眺める事ができる。手を伸ばして高い位置から写真を撮ってみた。「何とかなる!」食べ物の位置とメニューがどこなのかはクリア!

 斜め45度で首と腰を固定したまま食事するのは難しい。普段は飲み込む時には気道と食道を無意識に使い分けしているけど、実際負傷状態で食べると食事がゆっくり喉を通るのがわかる。あまりにゆっくり過ぎて気を抜いたら気道に食べ物を吸い込むような感じで怖い。仮に吸い込んでも普段なら咳き込む事で吐き出すんだけど、咳をすると腰と首に激痛が走る。その痛みも死にそうに痛い。どっちにしても両方共に何か起こったら死を覚悟な訳ね。

 汁物はさらに技術を要する。液面を見ながらすすれる味噌汁は美味しい。でも斜めからだと液面が見えずに、角度をつけ過ぎた場合口のち両端からダラダラと胸の辺りにスープのシミができる。盲目の人は本当に器用なんだろうなと実感する。

 30分ぐらいのゆっくりした食事が適度な満腹感を誘う。そして心からご馳走様でした。と言えた瞬間だった。幾度となく喉に詰まりそうになり、ボロボロこぼして、でもかたくなに介助の申し出はお断りし続けた。食事すらできなければ、退院はいつになあるかわからない...。この時は1週間で退院する気持ちでいっぱいだった。

つづく

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このページは、音楽工房『響』管理者 てんまるが2022年12月29日 14:41に書いた記事です。

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